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コラム COLUMN

スーパーで見つけたお盆の風景

毎年、お盆の時期になるとスーパーの一角に並ぶ、ナスときゅうり。特にこの時期になると、普段は目立たない野菜たちが、特設コーナーで主役を飾る光景が見られます。色鮮やかに並べられたナスときゅうりは、どこか誇らしげで、この季節ならではの風物詩として目に留まります。

先日、私がいつも買い物に行くスーパーでも、お盆飾り用のナスときゅうりが売られていました。小さな割り箸や竹串がセットになったものもあり、家族みんなで手軽に「精霊馬」を作れるように工夫されています。見るからに新鮮でつややかなナスときゅうりは、いつもの野菜売り場とは違った雰囲気を醸し出し、何とも言えない温かみを感じました。

そこでふと思い出したのは、私が子どもの頃、家族みんなで精霊馬を作った時のことです。祖母が教えてくれた通り、ナスには割り箸を刺して牛に見立て、きゅうりには馬のように足をつけました。祖母は「おじいちゃんがこの牛に乗ってゆっくり帰っていくんだよ」と、牛のナスに故人を偲ぶ思いを込めていたのを覚えています。今、スーパーで並んでいるこれらの野菜を見て、当時の思い出がよみがえり、心が少し温かくなりました。

ナスときゅうりには、先祖の霊を大切に迎え、そして名残惜しくも送り出すという、日本ならではの深い意味が込められています。この風習が現代でも続いているのは、私たちがどれほど先祖を大切に思っているかの表れです。

ナスの牛

ナスで作られた牛は、故人がこの世を離れる際にゆっくりと帰るための乗り物を象徴しています。牛はゆっくり歩く動物であるため、故人が名残惜しみながらも、少しずつあの世に戻っていくことを表現しています。また、牛は物を運ぶ役割も担っており、故人があの世から戻る際に家族の思い出や供え物を持ち帰ることを願っています。

きゅうりの馬

一方で、きゅうりで作られた馬は、故人があの世から早く戻ってくることを願う象徴です。馬は速く走る動物であるため、故人が速やかに家に戻ってきて家族と過ごすことができるようにという願いが込められています。故人が家族の元へ戻るのを待ち望む家族の気持ちが、このきゅうりの馬に表現されています。

精霊馬を飾る意味

精霊馬をお盆の間に家の玄関先や仏壇に飾ることは、先祖の霊を大切に迎え、見送るという気持ちの表れです。この風習は日本各地で行われており、地域によっては異なる形や意味を持つ場合もありますが、共通して先祖を敬い、感謝の気持ちを伝えるための大切な儀式です。

お盆の風習に込められた思い

お盆に行われるこれらの風習は、単なる形式にとどまらず、故人への敬意や家族の絆を再確認する機会でもあります。精霊馬を作る際、家族みんなでその意味を考えながら準備することで、お盆の意味をより深く理解することができます。

スーパーに並ぶナスときゅうりを見るたびに、今年もまた、故人を迎える準備が始まることを実感します。これらの野菜を使って、家族みんなで精霊馬を作り、お盆の意味を改めて考えることは、故人とのつながりを再確認する大切な時間です。